今までずっと食品業界で仕事してきたけど、原料用の水産物だったり、青果物だったりで加工食品を扱うことはほとんどなかった。
ただ今のタイの仕事では飲料系、お菓子、レトルト、冷凍食品、即席めん、調味料などなど酒以外の食品は何でも扱ってる。(守備範囲広い…)
日本から輸入するとなると、日本でOKでもタイで禁止されている添加物を使っていると輸入できないので、多少添加物とかの知識もつくようになったりする。
ということで、自分なりに少し調べたり実際に現場で知った食品に関することも少し書いていこうと思います。
今日は割とみんな聞いたことがあると思う「トランス脂肪酸」について、トランス脂肪酸は何なのか、なぜ体に悪いのか、日本で規制がされていない理由などについて書いていきます!
トランス脂肪酸とは?
まず、あぶらには常温の状態で液体の油(あぶら)と常温で個体の状態の脂(あぶら)があって、これをまとめて油脂(ゆし)と呼ぶ。
この油脂は脂肪酸とグリセリンという分子からできてるらしいんだけど、この油脂を構成している脂肪酸というものには色んな種類があったりする。
脂肪酸はまず飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されて、さらに飽和脂肪酸でも色々と種類があるんだけど、その中の1種類がトランス脂肪酸と呼ばれるものになる。
これはたぶん文章で説明するよりも表で見たほうがわかりやすいと思う。

飽和脂肪酸は肉や乳製品、ココナッツオイルなどの植物性油に入っていて、僕ら一般人が脂質と聞いてイメージする、食べ過ぎると太ってしまう良くない脂。
一方で不飽和脂肪酸は一般的に魚とかオリーブオイルとかの植物にある脂質で、体にとって良いものも多い。
たまに聞くオメガ3とかオメガ6とか、オリーブオイルとかに多く入っているオレイン酸とかもこの不飽和脂肪酸の1種らしい。不飽和って聞くとなんか体に悪そうだけどね。
トランス脂肪酸の何が悪いの?
体にいいものが多い不飽和脂肪酸の中でなぜかトランス脂肪酸は体に悪いんだけど、トランス脂肪酸が悪いと言われている理由が、トランス脂肪酸を取りすぎると悪玉コレステロールが増えて、逆に善玉コレステロールが減ってしまうから。
悪玉コレステロールは血中に多く存在すると、血管内に沈着して動脈硬化を引き起こすことになるもので、逆に善玉コレステロールは血栓予防や血を固まりにくくする作用があり、動脈硬化を防ぐ作用があるもの。
善玉が減って悪玉が増えるということは動脈硬化や狭心症、心筋梗塞などの心疾患を引き起こす可能性が高くなるから、トランス脂肪酸は体に悪いと言われる。
実際、心疾患は日本での死因はがんに続いて2位だから、トランス脂肪酸はなるべく取らないほうがいいはず。


トランス脂肪酸は何に入っているの?
じゃあこのトランス脂肪酸、一体何食べたら入っているのかというと、部分水素添加油脂(ぶぶんすいそてんかゆし)というものに入っているらしい。(PHOsとも呼ばれる)
聞いたことないって人がほとんどだと思うけど、部分水素添加油脂は、なたねや大豆などの植物性油に水素を添加して固体にしたものらしい。
液体の油に水素入れると固体になるんだね。

あとは植物性の油とかからニオイを取り除くために高温処理をすることがあるけど、その過程でもトランス脂肪酸が生成されるらしい。
んで部分水素添加油脂は主にマーガリンやショートニングの原料として使われる。
だからそんなマーガリンやショートニングを原料として使ったパンや洋菓子、揚げ物を食べるとトランス脂肪酸を摂取することになる。
各国のトランス脂肪酸の規制は?
トランス脂肪酸はなるべく取らないほうがいいので、部分水素添加油脂の使用は禁止されている国もあるし、禁止されていないとしても、使用料の規制などがある。
- カナダ 使用を禁止
- アメリカ 使用を禁止
- シンガポール 使用を禁止
- タイ 使用を禁止
- 台湾 使用を禁止
- 香港 使用を禁止
- フィリピン 使用を禁止
- デンマーク 総脂質 100以上の場合、2g以下
- スイス 総脂質 100以上の場合、2g以下
- オーストリア 総脂質 100以上の場合、2g以下
- 中国 表示義務
- 韓国 表示義務
こんな感じでここに書いてない国も含めて各国で何かしらの使用規制や表示義務があるんだけど、実は日本ではなんの規制も表示義務もない…
なぜ日本ではトランス脂肪酸の規制がないのか
日本で規制がない理由として言われているのが、日本はそもそもトランス脂肪酸の摂取量が他国に比べて低いからということ。
WHOによれば、健康に影響を及ぼすトランス脂肪酸の摂取量は、総エネルギー摂取量の1%未満がいいとのこと。(大体2gぐらいになるらしい)
ただ日本人のトランス脂肪酸の摂取量は約0.5%が平均値。
(ちなみにアメリカの平均値は2.2%でWHOの基準を超え、心臓疾患が死因の1位になっている。)
「なーんだ、WHOの基準下回ってるから規制とかしなくて大丈夫じゃん!」ってことで政府はトランス脂肪酸の規制も表示義務も設けてないらしい。
でもそれってすごい安直な考え方で、平均ってことは揚げ物とかパンとかよく食べてる人はWHOの基準の1%を超えてる人はいるわけだし、トランス脂肪酸の表示がないと自分がどれくらい摂取してるかわからないんだから、表示義務ぐらいしてもいいのに。
ちなみにお隣韓国は、成人のトランス脂肪摂取平均は0.18で日本より低いけど表示義務がある。


まとめ
添加物規制の先進国であるタイにいると、日本のものはほんと規制が緩いくて輸入できないものが多い。
最近だと輸入しようと思った味噌汁とかおつまみが、部分水素添加油脂を使ってて輸入できなかった。
日本のごはんはおいしいけど、それは添加物の規制が少なくて何でも使えるからおいしいって部分もあるってことを1つ頭の片隅に置いておくべきなんだぁと思った。(もちろん素材がおいしいとかいう要素もあるけど)

